お嬢様と執事さん
「あぁあ~、楽しかった♪」
お客様が帰って、紗依ちゃんや未来ちゃんたちも帰ったあと、私はまだドレスを着たまま、連さんとパーティー会場に残っていた。
「お嬢様」
「ん?」
「私と一曲、踊って頂けますか?」
連さんはまるで王子様のように膝まづき、私の手をとった。
「はい……───」
演奏者はいないパーティー会場。オルゴールの音色だけで、くるくる、くるくる……連さんとは練習で何度も一緒に踊ったのに、すごく、すごく楽しい♪
「お嬢様、とてもお上手になられましたね」
「たくさん練習したもん♪」
にこにこと満面の笑みで答える。連さんも楽しそうに微笑んでくれた。
パーティーでたくさん踊ったはずなのに、連さんとのダンスは、時を忘れてしまうほど、いつまでも、いつまでも踊った。
気づいた時は深夜12時。鐘の音で私と連さんのダンスは終了。
まるでシンデレラみたい。
ガラスの靴を忘れることもなく、魔法が解けるわけでもない。だが、このまま、時が止まってしまえばいいと、初めて感じた。