お嬢様と執事さん
「………っ」
思わず顔をしかめてしまう。
「お前、自分の立場をわかっているのか?執事とお嬢様だぞ」
「あぁ、わかってる。だが奥様も、身分は関係ないとおっしゃってくださった」
「……それで?」
壬晴は睨みつけるような視線をこちらにむけ、言い放った。
「俺は本気だ。自分の気持ちごまかしてるような誰かさんとは違う」
そう言って、あいつは部屋をあとにした。
「くそ……っ!」
ダンッと壁を殴っても、この言いようのないイライラはおさまらなかった。
あいつの嘘のない言葉が耳に残っている。
あいつが言った、“自分の気持ちごまかしてる奴“とは、まさに自分のことだ。