お嬢様と執事さん
お嬢様の部屋を後にし、執事に用意された部屋へ入ると、同室の相川樹さんがすでに入浴を済ましていた。
「先に風呂もらったぞ」
「構いませんよ。私も失礼して入浴してきます。」
「別に執事同士だ。敬語はいらねぇぞ。」
入浴の準備をしている後ろから聞こえた。
「いえ、この執事服を着ているときは、どんなとき、どんな方でも執事として対応するのが私の志しですので。」
苦笑しながらそう告げると、相川さんは面白そうにクックッと笑った。
「あんたのお嬢様も変わり者だが…いや、悪い意味ではなくてだな。あんたも相当変わり者だ。」
「そうでしょうか……」
多少ムッとしたが、相手に悪気はないのだろう。
「そうだろ。ってかどんな方でもって……、まるで気にいらない奴にも執事として対応すると聞こえるが?」
「そのとおりですが?」
すると今度は呆気にとられたようにポカンとし、すぐに笑い声をあげた。