カルマ
杉崎が、平井の指した方向を見ると、グリーンの車体にブルーのしま模様が描かれた市営バスが、ターミナルに入ってくるのが見えた。

「あ、そうですね……」

杉崎が次の言葉を言いかけた瞬間だった。

「キャアアアアアアアアアアアアアア！」

耳をつんざくような女性の悲鳴が聞こえてきた。

悲鳴の聞こえてきた方向をたどってみると、列の最後尾の方で、白い装束を着た４～５０代ぐらいの男が正座をして、姿勢を正している姿が見えた。

男の隣で、２０代ぐらいのＯＬ風の女性が震えている。

襟の部分を開いて腹部を出し、ちょうど切腹するような格好に男はなっていた。

バス乗り場に並んでいる誰もがその光景に圧倒され、動ける者は誰一人としていなかった。

まるでその場の時が止まったような、静寂に包まれた、不思議な空間が訪れていた。


男は、恍惚の表情を浮かべながら、なんの迷いもなく


一気に腹を、短刀のような物で横一文字に
かっさばいた。


「キャアアアアアア！イヤアアアアアアアアアアアア！」


男の鮮血がほどばしり、地面に血溜まりが出来る中、現場には女性の悲鳴がこだましていた。

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