カルマ
しかし、黒川が関わっている宗教団体の思想は非常に危険です。
何か起きてからでは遅いんですよ!
編集長、ここは記事にすべきです!」

杉崎は、必死に佐竹に食い下がった。

「杉崎、俺達はジャーナリストと言えば、聞こえはいいが、所詮は会社に雇われているサラリーマンなんだよ。映画に出てくるヒーローのように振る舞うことは出来ないんだ。
俺も、お前も、金を稼いで家族を食わしていかなくちゃならん。
そうだろ?

それに、危険な思想を持っているというだけで、何か法を犯すようなことを彼らはしたのか?
報道の自由があるように、信教の自由が憲法で保証されていることも忘れてはならない。とにかく、上の意向には逆らえん。
この件はここまでだ。」

佐竹は、もうおしまいという感じで話を一方的に打ち切ってしまった。

佐竹の言い分も、充分に理解の出来るものだった。

実際、黒川は影の総理と呼ばれていて、日本社会の裏の支配者と言ってもよい存在だった。

無理に記事にすれば、脅しは現実のものとなるであろう。

(クソッ!確かに彼らは法を犯すようなことはしていない。だが、あの反社会的な危険思想を持った団体を、放っておくべきじゃない。
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