カルマ
この世の中、正しいことしたって馬鹿見るだけだぜ。
大事なのは、いかに権力者に媚びを売り、支配する側の人間でいるかだ。
お前は今回の事で、支配される側の人間になってしまったんだ。
なんかのドラマで、正しい事をしたけりゃ偉くなれ、っていうセリフがあっただろ。
お前は偉くなる前に、自分の気持ちを押し通したんだよ。
確か、出向先は仙台だったよな、名物の牛タン待ってるよ。」

成松は、杉崎への対抗意識からか、日頃から挑発的な態度で接してくる事が多かった。

(支配する側の人間とされる側の人間か……そんな風な人間のくくり方、冗談じゃねえよ。だが、成松の言った事、全てが間違ってるわけでもない。
俺は黒川に比べたら、何の力もない人間だ。力のない人間が、分不相応なことをしたのかもしれない。
黙って我慢していれば、順調に出世して、妻や子供に楽な生活をさせてやれたかもしれない。
でも、自分の生き方に嘘はつけなかった。
とんでもない相手でも、カウンターパンチをくらわしてやりたかった。
自分のした事に悔いはない。悔いはないが……、家族には迷惑を掛けてしまった……。)

記者とは、劇団における照明係のようなものである。

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