カルマ
主役にスポットライトを浴びせ、輝かせる存在。

観客が、照明係の存在を意識する事はほとんどないのだ……。

(あーあ、世の中腐ってるよ。政治家は国民の暮らしのことを考えず、考えるのは自分の懐のことばかり。

国の借金は年々増える一方だ、一体いつから日本はこうなってしまったんだ。

いっそのこと、ゲーム機みたいにリセットボタン押しちゃってさ、世の中最初からやり直せねーかな。)

杉崎の頭に浮かんでくるのは投げやりな考えばかりであった。

(バカみたいなこと考えててもしょうがないな、現実を見ないと。今更どうこう考えてもしょうがない。

俺は、あの時自分で正しいと思ったことを貫き徹したんだ。
それでいいじゃないか。これからは、家族を守ることだけを考えていけばいい。)

杉崎はブルブルと頭を振り、気持ちを切り替えた。

現実に立ち返り、辺りを見回すと、藤見ヶ丘住宅地行きのバス乗り場の前には、すでに25人ぐらいの人が並んでいた。

杉崎の並んでいる位置は前の方だった。

(これは確実に座れるな。やった。)

杉崎は小さな幸せにほくそ笑んだ。

ゴールデンウィーク明けの金曜日ということもあり、仙台駅前は人で賑わっていた。

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