【短】ハピネス
迷わず席を立った都が開けた玄関のドアの向こうには、裕紀が立っていた…。



「どうして…?」



「コイツに言いたい事があるだろ?サヤの淋しさも涙も、そのせいだろ?俺はどういう答えが出てもいいから、サヤに任せるよ。」



裕紀が来たのが合図のように、手早く帰り支度をする都をただ呆然と見つめるアタシ。



靴を履いて部屋を出る都を目で追って、ようやく我に返ると慌てて追いかける。



「待って、ミヤ、行かないで…。」



振り返って、都は静かに首を横に振る。



「サヤを泣かせる張本人とこれ以上一緒にいたら、喧嘩になるだけだよ。コイツと二人で話して、それでも俺が必要ならTELして?」



憤る言葉とは裏腹に淋しく笑って、じゃあ、って短くアタシに別れを告げる。



裕紀に向き直ってあとは頼むって一言を託して、足早に去って行く都。
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