【短】ハピネス
「ミヤくんじゃなくて、ミヤ。」



言いながら、都はアタシの髪を撫でる。



「ミヤ?」



「もう、遠慮しないから。」



何が…?って聞くより早く、アタシを腕の中に抱き寄せてキスをする。



また心臓が跳ねて、思わず固まるアタシの耳元に、サヤおやすみ、って囁いて、額にくちづける。



そして都はいつものように微笑んで、右手をヒラヒラと振って立ち去る。


遠慮しないって宣言通り、今までの都とはまるで別人…。



都が初めて見せた、オトコの顔。



都は、恋愛もあんまり自分から行くキャラじゃないのかなって想像してたのに。



そしてようやく気付く。


さっき手をつないだ時の、ドキドキの理由。



考えてみたら不自然なくらいに、二人でゴハン食べてても、悩み相談でアタシをなだめても、今まで都はアタシに指一本触れた事がなかった。



これが作戦なのか無意識なのか分からないけど、どうやら予想を超えて、都は策士なのかも…?


都に勝負を挑むのはやめよう、と密かに誓う。



…アタシに勝ち目がないのは、分かり切っているから。
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