恋スル運命
もう見れないと思っていた風景が、こうして目の前にある。





それが嬉しくて、だけどやっぱり切なくて。




その想いが雫となって目から零れ落ちる。




ポロポロと想いの分溢れて止まらない。




止まらないよ、……カイ。










『沙〜羅っ。一人で観てないで海偉さんと一緒にいなさいよっ。

大変よっ!神田っていう例の女が来たのよ!

海偉さんにベッタリでこのままじゃ……え?…泣いてるの?

っていうか顔色真っ青!!大丈夫っ!?』




「美緒…私……」





声を掛けてくれた美緒を振り返ろうとして、体がよろめいた。





『具合悪いのね!?大輔さんに診てもらおう?

今、呼んでくるからここで待ってて!

海偉さんも連れてくる!!』





「だ、駄目」




順路を逆方向に駆ける背中には、私の声は届かなかった。





ここにいてはいけない。





もう、あなたとは会わない。





会っちゃいけないんだから。





ふらつきながら出口へ向かって




私は、また彼の前から…





逃げ出した。





< 108 / 161 >

この作品をシェア

pagetop