恋スル運命
『気にしなくていいよ。僕は午後から来てと言っておいたのに、早く来たのは彼の勝手だ。』




ニコリと笑って私の手を引いてその“彼”の元へと歩き出す。




シャワールームを出ると、窓際のソファに足を組みコーヒカップ片手に座る男性がいた。




『サラ、彼が昨日話してた画家のカイだよ。

カイ、彼女が僕の妻のサラだ』




「初めまして。サラです。たくさん待たせてしまったみたいでごめんなさい」




『………いや、もういい』



そう言ったきり黙ったまま、ジッと見られた。




ジョージさんの澄んだブルーの瞳とは対称的な、意思の強そうな濃い黒色の瞳。



私の全てを見透かすかのような、その瞳で何も言わずに見てくる。




もういい、なんて言ったけどやっぱりまだ怒ってるのかしら。




戸惑いながら隣にいるジョージさんを見上げる。




『カイのやつ、早速やる気になったな。

君をどう描こうか、色々思案してるんだよ』




思案、というより観察されてる感が否めないけれど。


怒っている訳でないのなら安心よ。




まだジッと見てくるカイさんに愛想笑いを浮かべながらそんな事を思った。







これが、私とカイとの始まりだったなんて、この時の私が知るわけもなかったーー…




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