恋スル運命
「妻なら、自分以外とキスをした夫に怒ったり、泣いたりするのが当然じゃないか」



他の誰か・・・・・・マリアさんとキスをした事を私が怒りもせず平然としていたことが、相当不服だったらしい。



「だって、まだパーティーの最中だったし・・・・・・それに・・・・・・」


「・・・・・・それに何?」



マリアさんとは特別な関係だったんでしょう?
とは聞いてはいけない、そう感じた私の口からは別の言葉が出ていた。




「あなたと、険悪になりたくなかったんです」



そう告げると、押さえつけていた手の力がゆるんだ。




先ほどとはうって変わって、優しいついばむようなキスを繰り返される。



「君が余りにも平然としているから僕のことなどどうでもいいと思っているかと勘違いしてひどいことをしてしまった。・・・・・・すまない」




申し訳なさそうに言う彼に、私は何も言えなかった。




「・・・・・・怒っているかい?」



黙る私の様子を伺うように訪ねられ、首を横に振る。




「悲しませて、ごめん」



その言葉に胸がズキンと痛んだ。




私は、悲しいと思わなかった。


マリアさんとキスをしているところを見ても私は、何とも思わなかったのだ。



彼を、ジョージさんを愛しているなら、彼の言うように、怒ったり泣いたりするのが当然の態度なのに。



実家がどうなるのかと、その事しか気にしていなかったのだ。




そのことが、私以外の人とキスをしたジョージさんより、罪深い事の様に思えてならなかった。





「ごめんなさい」





思わず口をついて出た言葉にジョージさんは、



「もう、かなしませたりしないから許してくれ」



そう言って優しく私を抱いた。



抱かれている間、私はずっと彼に心の中で謝り続けた。




< 157 / 161 >

この作品をシェア

pagetop