恋スル運命
尋ねた時の彼の表情は、切なそうに歪んだ。




それを見てどういう訳か胸が痛む。





『俺には………って言ったくせに…っ!!』





「え?」





近くをバイクが通りその排気音で聞き取れなかった。




けれど彼の顔は切なそうに歪んだまま私を見つめているから私が悪いのかも…という気持ちになってくる。





どうしよう。





目が逸らせない。





どうしてそんな顔で見るの?




そんな顔するならはっきりとどこで会ったのか言ってくれたらいいのにーー…








『沙羅っ!』





名前を叫ばれて、お互いビクッと体が跳ねた。




振り返ると美緒が私の元へと駆けてくる姿が目に入る。





瞬間腕を引かれて耳元に口を付けられる。




「あッ…」




またビクッと体が跳ねた時に、耳に口を押し付けたまま話しかけられた。





『思い出すまで覚悟してろよ。俺は諦めたりしない』




言ってる言葉は横暴で脅しにも聞こえるような言葉なのに、耳元で囁くように言い放たれて甘い響きに聞こえた。





ゾクッと怖さではない別の感覚が体を駆け抜けて、その場にへたり込んでしまう。





そんな私を見て不敵に笑い、鞄を押し付けてスタスタと歩き去っていった。




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