恋スル運命
帰りの車内でも手は繋いだままだった。




離そうと思えば簡単に外せる力加減で繋いだ手。




それを外そうって気持ちにならない。





『サラの家から送る。場所はどの辺りだ?』





「△△町。ここからだとかなり遠いからあなたの家から回ってもらって」




乗り始めた時のように家を知られたくないとかそんな気持ちはもうない。




単純に家の近い方から行った方がいいって思ったのに。




海偉はタクシー運転手に私の家の方向へと行くように伝えた。




きっと反論しても無駄なんだろうな。




だから何も言わなかった。



少し長い私の家までの道のり。





途中繋がれた手が海偉の膝の上に移動させられても、
指と指を絡めての繋ぎ方に変えられても……



抵抗する気も文句を言う気にもならなかった。




ゴツゴツとして少しかさついた海偉の手の感触を、心地よいと思う。





ーー私、この手を知ってる?




前にも繋いだ事がある気がして不思議な気持ちが沸き起こる。





ーー何処で?




思い出そうとしたけれど、頭にモヤがかかってるみたいで何も浮かんでこない。




それを酔っているからだと思って私はゆっくりと目を閉じて家に着くまでを過ごした。



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