恋スル運命
『センパイへの言伝ても預かってます

“見てもらいたい絵があるから、初日に絶対来い”だそうです』




「私に?しかも初日に?」




『初日にしか顔出さないつもりなんじゃないんですか?』




そっか。確かに本人が毎日会場にいるってあまり聞いたことがない。





「ま、気が向いたら昼休憩の時にでもチラッと見てあげようかな」




なんて萌花の手前、強がって言うと、萌花が『あ、忘れてた』なんて言いながら付け足してきた。




『“来なければここから引きずってでも連れてく。覚悟しとけ”とも言ってました〜』




…………お客様の目もあるのに、そんな事されたら困るって。




来月のシフトはまだ作ってないし、展覧会初日の日は休みをとっておこう。




制服姿で見に行くよりも私服で行った方が周りの目も気にしなくていいしね。




海偉から渡されたチケット片手に、来月のシフト表の休み希望欄へ休み希望の日を書いていると、目の前が人影で翳った。





お客さまが来たんだと顔をあげる。





「いらっしゃいま……」

『………そのチケット……
今日も先生、ここに来てたの?』





目の前にはチケットを凝視する神田さんの姿があった。




< 80 / 161 >

この作品をシェア

pagetop