恋スル運命
「海偉なら今さっき出ていったので、追いかければまだ間に合うと思いますけど?」




口元に笑みを浮かべてる割に、鋭い視線を投げつけてくるから、嫌味たらしく言ってやった。




『客として来てるのに、ここのお店は接客マナー、どうなってるのかしら』




客として?




神田さんに嫌味を返されて一瞬言葉につまってしまう。




「ねえ、私に似合うルージュ、選んでくれる?」




「……はい。ただいま用意致しますので、こちらにお掛けください」




どういうつもりでここに来た?なんて考えなくても何となく見当がついた。





「まず簡単なカウンセリングを行いますので、こちらにご記入お願いします」




それでもお客として来た以上は、私も接客しなくちゃいけない。




メイクに使う好みのカラーや普段スキンケアで気を使ってる事などを知る為のアンケート用紙を手渡した。



『先生とはどういうお知り合い?』




スラスラと用紙の選択肢にチェックをつけながら聞いてくる。




……やっぱりね。




お客として、なんてわざとらしいと思った。


仕事中の私と堂々と話がしたくて客として来たわけね。




「海偉とどういう知り合いかを、何故あなたにお答えしなくてはいけないんですか?」




『…何ですって!?』




私の答えが気に入らなかったみたい。




ペンを止めて、下からジロリと思いきり睨み付けられた。





悪いけど。



私、睨まれたくらいでオドオドするような弱いキャラじゃないの。




言い争いだろうが喧嘩になろうが、そっちがそのつもりなら受けてたつんだから。



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