恋スル運命
『グロス?』




私の手の中にあるのを見て怪訝な顔をする。




けれど、無視して使い捨ての小筆にグロスを取った。



「ちょっと失礼しますね」



小筆を神田さんの真っ赤な唇にのせた。




「こちらのグロス、ベージュが強めのピンクなんです。

お客様のお持ちになってる口紅の上にこうして重ねると……

今とは違う色合いになって新鮮ですよ」




横に置いてあった鏡を神田さんの正面に置いて見てもらった。




「顔立ちが綺麗だから紅い色がよくお似合いです。

けどこうしてベージュを重ねるだけで、少し柔らかい雰囲気になって、素敵です」




この人、真っ赤な唇よりももっと優しい色の方が似合う。




近寄りがたい美人顔が親しみのある美人顔になった。



「新しいルージュを増やすより、こうしてグロスを上塗りした方が今あるルージュも使いきれるし有効的じゃないでしょうか」




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