恋スル運命
『ねぇ、デパートで展覧会開けるって事は、海偉さんて相当有名なのね。

年収とか幾らくらいなのかな?

下手したら医者の大輔さんより高そう』




「絵画の値段てピンキリっぽいもんね。

海偉の絵ってピンとキリどっちなんだろうね」




絵なんて見に行った事もなければ買った事もないから想像がつかない。




『でも画家ってだけでうちの両親は反対しちゃうんだろうな。

“安定した職業の人を選びなさい”って目くじら立てていうママの姿が思い浮かぶもん』




不況が続いて失業率も下がらない状況だもん。
美緒のご両親が心配するのも頷けるよね。




その点私はラクかもしれない。




心配してくれる両親がいないんだから。




黙り込む私を見て美緒は困った顔をした。




『ごめん。親の話なんてしちゃって…』




「謝らないで気にしてないから!私にはユーリおばさまがいるんだから」




美緒が謝ったのは私が幼い頃、両親が事故死してひとりぼっちだと知っているから。




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