ハッピー☆ハネムーン
碧い海…そして白い砂浜。
どこまでも続く透明度の高い海に、サンゴ達が穏やかな波を作り出していた。
映画の撮影にも使われたこのビーチ。
その美しさに、あたしは瞬きも忘れていた。
「すごい人だね。…あ、入場制限してる」
石垣に両手をついて昌さんが身を乗り出した。
入場制限…そっか…環境保護の為にたくさんの人が入れないようにしてあるんだ…。
そうした取り組みで、ずっとこの美しいビーチは守られて来たんだろうな。
あ、写真!!
あたしは、この綺麗な景色を写真に収めようと鞄に手を突っ込んだ。
あたしがカメラを見つけるその前に…
「ほら!! 葵ちゃん こっちこっち」
その声に顔を上げると、カメラを構えたアツシ君の前で昌さんが手を振っていた。
「……」
「どうしたの? 早くおいでよ」
昌さんは、キョトンとしてあたしを待ってる。
…行けない。
行きたくない。
だって……
彼女の手が…
慶介の腕を掴んでいたから………
慶介は、昌さんの事なんか関係なさそうにビーチに視線を向けている。
あたしには、それが悲しかった。
まだ…迷惑そうにしていてくれたら……
救われた…かな?