ハッピー☆ハネムーン


その声に顔を上げると、アツシ君は壁に身を預けるように立って、こちらを眺めている。


ドキ!!


ほんの少し笑みを浮かべるその表情に、思わず胸が弾む。



「………」



昼間のカジュアルなアツシ君も素敵だったけど、このタキシード姿のアツシ君は……


なんてゆーか…



―――完全犯罪だ。



王子さまさながらなんだもん。




あたしには、慶介がいるからそれ以上の感情にはならないけど、きっと世の中の女の子で彼の笑顔におちない子はいないんじゃないかな。



「慶介さんは優しいね。 葵ちゃんがすごく愛されてるのがわかる。 でも慶介さんの気持ちわかるな。 葵ちゃんて…なんてゆーか目が離せないよね」


「ええ!?」



な…な…な…なにを…

…もう、顔から火が出そう。



この人はなんて事を笑いながら、言ってるんだろう。



恥ずかしくて、あたしは思わず俯いた。
そんなあたしを見て、アツシ君はクスクスを穏やかに笑ってる。


まったく…容姿端麗な彼が、そんなセリフを穿くもんだから、調子狂う。
でも、そのくさいセリフが似合ってしまう不思議だった。


……慶介にだってそんな事言われた事ない。
慶介なら簡単に言ってくれない事をアツシ君はサラリと言ってのける。




「…んんッ!」



無意味に咳払いをして、あたしは意を決して彼に向き直った。
目が合った彼は、両手をポケットに突っ込んで「ん?」と首を傾げる。



ぐッ…


ま…負けるな あたし~~!!!

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