ハッピー☆ハネムーン
半分涙目になりながら、あたしは何とか声を絞り出す。
「…ア…アツシ君は…なんのバイトしてるの?」
「あれっ 言ってなかったっけ? 俺……」
丁度その時……
「 葵 」
背後で声がして、あたしは慌てて振り返った。
視線の先には、手にカメラをぶら下げた慶介が立っていた。
「よかったぁ あったんだ」
「………」
傍に駆け寄ったあたしをチラリと見ただけで、慶介はまた視線を外してしまった。
頭1つ分より高い慶介のその表情は、よくわからなくて…
ドクン……
なぜだか、すごく不安になった。
「それじゃ、行きましょうか。 もう、船は停泊しますよ」
アツシ君の言葉が、遠くから聞こえる。
あたしは、握ったままの慶介の服をそっと離した。
無言の慶介が…
『 離せ 』
と言ってる気がして……。
その時、少しの衝撃が足元を揺らした。
船が陸に着いた事を、知らせる汽笛と共に。