ハッピー☆ハネムーン
船でアツシ君と別れると、あたし達はホノルルでも有名な夜景を見に行った。
綺麗……
小高い山の丘の夜景。
ロマンチックな雰囲気に、あたしと慶介は居心地の悪さを感じていた。
だって……さっきから慶介は口を利こうとしてくれない。
どうしたんだろう……
やっぱり、さっき何かしちゃったのかもしれない。
不安になりながらも、あたしはジッと慶介の隣で夜景を眺めた。
「……」
ホテルに戻っても、慶介はずっと考え事してるみたいだった。
ベランダの椅子に腰を下ろし、煙草をふかしていた。
その瞳は、どこか遠い昔を見つめているような……
そんな顔をしていた。
あたしはその姿を、ベッドの中からぼんやりと眺めている。
この光景……どこかで……そうか、夢だ。
あたしの夢の中の光景と似てるんだ。
あたしに背中を向けたまま煙草を銜える慶介は、ゆっくりこちらを振り返る。
そして、言うんだ。
―――『なにか』を。
そんな事を考えていたあたしは、灰皿に煙草が押し付けられた事で、一気に現実に引き戻された。
「どうも気になるな……」
慶介は独り言のようにそう言うと、あたしの視線に気づいて顔を上げた。
「……まだ起きてたのか?」
「え? ……うん」
起きてちゃダメなの? と、心の中で呟いてみる。
寂しいよ……。あたしはもっと慶介とイチャイチャしたい!!
でも、そんな事言ったらきっと……慶介引くでしょ?
―――ギシ…
ベッドが軋む音がして、あたしの体はビクリと跳ねた。
きっと今夜こそッ!!
シーツを掴む手に自然と力がこもる。
「葵…… おいで」
すぐ隣で、甘く少し掠れた声がした。