ハッピー☆ハネムーン
気を取り直して、もう一度室内を見渡してみる。
白を基調とした室内は、清潔感があり家具は椰子の木を使った物で統一されていた。
キングサイズのベッドには緑と白のハイビスカスをモチーフにしたパッチワークのシーツ。
そのシーツが一際目を引いている。
そのベッドの上に、赤い花びらとちょっとしたお菓子が用意されていた。
なんだか胸がドキドキする…
憧れていた南国のホテル。
まさにそんな感じ。
あたしはそっと赤い花びらを手にした。
顔に近づけると、甘酸っぱいような香りに包まれた。
「葵、下行ってみないか?」
「え?」
ぼんやりと花の匂いを嗅いでいると、不意に名前を呼ばれてあたしはビクリと振り返った。
「な、なに?」
思わずどもってしまう。
そんなあたしを見て、慶介はほんの少しだけ口角を上げて笑った。
うぅ…
またやっちゃった…あたし、昔からそう。
すぐに自分の世界に入っちゃうの…何度慶介にその事でからかわれたろう。
花びらをベッドに戻すと、あたしは部屋を出ようとする慶介の後を小走りで付いて行った。