ハッピー☆ハネムーン
「きゃッ……」
頬に涙が伝った瞬間だった……。
あたしは、自分に何が起こったのかすぐに理解出来なかった。
なに…?
これ……
手首に感じる痛み。
重さ。
目の前には……慶介の顔。
息がかかりそうな距離であたしを見下ろす慶介は、片手であたしの両手を掴んだまま、それをゆっくりと上にずらした。
ドクン…
怖い…よ……
その敵うはずのない力に、勝手に体が震えだす。
『慶介? どうしたの』
心では、そう言っていても口からは一言も言葉が出てきてはくれなかった。
初めて慶介を怖いと思った。やっぱり“男の人”なんだ。優しくて、いつも余裕たっぷりの慶介。自分の感情は、表に出さない慶介。
その彼が……どこか思い詰めたようにあたしを見つめている。
その時、慶介の唇がほんの少し開いて、息を吸い込むのがわかった。
「……ん…」
唇に柔らかい感触……
強引で荒っぽくて、まるで本能のまましているような――…キス。
何度も何度も……角度を変え、深さを変えてあたし達は唇を合わせた。
それは、今まで感じた事のない……慶介だった。