ハッピー☆ハネムーン
―――トンッ
「……わッ」
ぼんやりと空を眺めていると、足元に何かがぶつかった衝撃が走った。
見下ろすと、見たこともない子供の姿。
「あ…大丈夫?」
よそ見をしていて、あたしに気づかなかったんだろう。
黒髪の今にも泣き出しそうなその男の子は、日本人のようだった。
うわぁ……かわいい子。
まだ3つくらいかな?
周りをキョロキョロと見渡しても、親らしき人物はどこにもいない。
「どうしたの?……ママは?」
あたしの言葉に、その男の子は反発するようにキッと睨むとプイッと顔を背けてしまった。
―――はぁ?
なにそれ!
ぶつかってきたのはそっちでしょ!?
「ちょ……ちょっと、待ちなさいよ」
走り去ろうとする子供を捕まえようと手を伸ばした瞬間。
男の子は、方向を変えて彼に駆け寄った。
え?
その先には、なぜか煙草を銜える慶介の姿。
今まであたし達のやり取りを眺めていたのか、慶介の顔にはほんの少し笑みが浮かんでいる。
でも、自分の方へ向かって来る子供に気づいて、その表情からは笑顔が消えた。
そして、子供は慶介の足に体当たりするとこう叫んだ。
「パパぁ!!」
「ええぇ!!?」