ハッピー☆ハネムーン


「……葵は わかってない」



沈黙の後、慶介の少し考えたような言葉が聞こえた。



「わかるわけないよッ!!
 慶介、何も言ってくれない
 わかれって言われても無理だよ! 
 バカぁ!もうキライー…でも好き!!もうやだぁ……」



あたしってほんと子供。
自分でもつくづく嫌になる。

きっと、慶介も愛想つかすよね……



「なんか、言ってる事無茶苦茶……」



――はい。
ごもっとも。あたしって無茶苦茶です。



慶介は、顔を覆っていた手で頭をガシガシと乱暴に掻くと、ベッドに力なく腰を落とした。
突っ立ったままのあたしをチラリと見ると、また視線を落として口元に手をやる。


……なに?

何を言う気なの?



ドクン


ドクン





「…………」

「……」



慶介はまた「はあ」と深く息をつくと、頬杖をついてあたしを見上げた。



「あー……もう
なんでそんななんだよ。
正直……俺、いっぱいいっぱい。
 独占欲の塊だったってゆーか。
 すごい嫉妬深いのに、この旅行で気がついてんだから……
 かっこ悪すぎ」


「……」



そう言うと、慶介は視線を逸らしてしまった。


うそ……

待って? 理解できない。


慶介が……嫉妬してたって事なの?



この旅行でって……

あたしは、自分がアツシ君といた時の事を思い出した。

あたしはあの時、慶介と昌さんが一緒にいてすごく嫌な気持ちになってた。
でも、その後……慶介の態度も…………



――まさか、あれが?


ハッとして顔を上げると、照明でオレンジ色に照らされた慶介と目が合う。






信じられなくて、口を開けたまま閉じることを忘れてしまったあたし。


そして、慶介はさらにこう続けた。



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