ハッピー☆ハネムーン


「バカだな……」


溜息交じりの慶介の声がして、あたしの頬はあたたかい手に包まれていた。



「…………」




真上には慶介の呆れたような優しい笑顔。
頬を包んでいた慶介の左手は少しずつ位置をずらし、耳に触れ、
やっと胸まで伸びたあたしの細い髪に、その長い指が絡められる。

空いていた右手が、そっとあたしの左手を捕らえた。


その間も、慶介の熱っぽい瞳はあたしから逸れることはない。




ドキン


ドキン





まるでスローモーションのように、その1つの動作がゆっくりに感じて。

映画のワンシーンさながら、印象的にあたしの瞼に焼き付けられていく。




息がかかりそうな距離に慶介を感じて、その前髪があたしの額に触れた時――…

囁くような声があたしを包んだ。




「――俺、自分が自覚してる以上に 葵に夢中らしい」




そう言って、悪戯に微笑んだ慶介。





「―――愛してる」


「……え」





唇が触れ合う瞬間、そう言って笑った慶介。
まるで照れ隠しみたいに、重なった唇が深くなる。



「……ん」






何度も……何度も。



あたしに話す隙を与えないくらに。

嬉しくて、あたしは泣きながらキスをした。



幸せすぎて……ほんとに溶けちゃうかも。

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