ハッピー☆ハネムーン
急に静かになったあたしを不思議に思ったのか、慶介が立ち止まった。
「葵? どうした?」
慶介の声に胸が苦しくて、あたしは顔を上げる事が出来ない。
きっと、あたしの顔を見たら、慶介にこの気持ちがバレちゃう・・・。
何も言わなくても、ただ、目を合わせただけでなにもかも見透かしてしまう慶介が、時々怖くもあった。
だって、こんな気持ち知られたら・・・あたしの事うっとうしく思うに決まってるよ。
だから・・・言えない。
「葵?」
俯いていた視界に慶介の足が見えた。
見上げると、すぐ傍に来てあたしを見下ろしている。
「なんでもないッ!! この砂、すっごく綺麗だなって・・・記念に持って帰ろうかな」
あたしは精一杯の笑顔を慶介に向けた。
慶介は一瞬何かを言いかけたけど、すぐに柔らかい笑顔を零した。
「砂を?もっといい物があるだろ」
そう言って、慶介はその場にしゃがむと砂を手にとってその感触を確かめた。
「・・・でも・・・違うな、この砂は。 持って帰るか」
慶介はあたしを見上げると、子供のような無邪気な笑顔を向けた。
ドキン・・・
だめ・・・胸がきゅうってなる。
これ、絶対ハワイマジックだ。
いつもより慶介がキラキラして見えるもん。
ドキドキと高鳴る胸を押さえながら、あたしは冷静を装って慶介の隣に腰を下ろす。
「ね? もうぜーんぶ特別。慶介とあたしの周りは全部!」
「えへへ~」と笑うあたしを見て、慶介も「そうだな」と笑った。
―――・・・幸せ。
あたし、慶介とこうしていられて・・・すごく幸せです。