Advance

「・・・あ、あのっ・・・マスター・・・」
「ん？何だ？」
若干、険しさを残したままマスターは僕の方を見る。
正直、少し怖かったが、僕は戸惑いつつもこう行った。
「・・・僕・・・平気ですから・・・さ、さっきの事も・・・気に・・・してません・・・から・・・///」
勇気を振り絞って僕はこう言った。
気にしていないと言うのは嘘だったが、そうでも言わないとその場が収まりそうになかったので。

『嘘付け・・・無理して・・・』

マスターは不安そうに僕の事を思う。

その気持ちだけでも僕は有り難かった。

だからこそ、僕は仕方なく決意する。

「そ、それに・・・何か・・・可哀想だし・・・」
「可哀想って誰が？」
「え、えっと・・・その人と・・・その子が・・・」
「無理すんな、これっぽっちもそうは思っていないだろう？」
「Σって、どれだけお前は毒舌なんだ！？」
マスターの毒舌に男性は突っ込みを入れるが、すぐにマスターに睨み返される。
「五月蝿い・・・元はそのガキが秋人に手を出したんじゃないか！？」
「う・・・」
「・・・あぁ、もう・・・本当に気にしてませんから！？僕だって男です！？む、胸を触られたぐらい・・・///」
そう言い切れない自分は男として駄目だなと思ってしまう。
だが、そんな僕に男性はこう言った。
「・・・ええっと・・・秋人君かな・・・？私は金豪剛と言う者だ。色取々警察本部の刑事だ。そして、SILVER・・・君の上司と言うべきかな？二年前まではこの女性の夫だった者だ。」
男性・・・剛さんは丁寧に、そして包み隠さずに自分の身分を明かした。
それが彼なりの誠意なのだろう。
「そして、この子は・・・知人の子供の赤星裂だ。今は事情があって私が面倒を見ているのだが、私も刑事と言う身分でしばらくはこの子の面倒を見れなくなったんだ。だから、裂をSILVERに託したいのだが・・・」
剛さんの目は真剣だった。
微かに感じ取れる“心の声”もそうだ。

僕やマスターに対する申し訳なさや裂と呼ばれる少年を案じる親心・・・


同じだ


マスターが僕を案じるように、剛さんも裂と言う子を案じている・・・