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第三章・嘘つきな自分
初めてできた“トモダチ”と暮らすようになってから数日過ぎた―――



「・・・よし・・・秋人・・・オバちゃんは居ないよな・・・?」
「まあ、今の所は・・・(汗)」
「うっしゃあ!?さぁって・・・この扉の向こうは夢にまで見た大人の楽園だぁ〜☆」
「・・・(汗)」
鼻息を荒くしつつも店内に通ずる扉の前で裂君は興奮している。
そして、僕は呆れる。


この数日間でマスターは裂君に僕と同様、雑用の仕事などを教えた。

そう難しい仕事ではないせいか、裂君はすんなりとそれを覚えた。

だが、問題なのは裂君は僕と違い、店内の中に入りたがるのだ。

どうやら、ホストやそのお客・・・要は大人の遊びに興味津々らしい。

なのでマスターの居ない時には隙在らば店内を覗く・・・仕舞いには入り込んでしまいそうな勢いだ。

「さてと・・・この中ではどんなパラダイスが・・・☆」
「あ・・・れ、裂君!?」
「何だよ、うるせーな。今、いいトコ・・・・・・・・・あっ(汗)」
僕は一生懸命、裂君に伝えようとしたが遅かった。
「れーつー・・・(怒)」
「うげぇ・・・また、見つかったぁ・・・(汗)」
その背後には鬼のような形相のマスターが裂君を睨んでいた。
「お前と言う奴は・・・ほんっとうに懲りないなぁ・・・」
「へへへ・・・それ程でも・・・(汗)」
「一辺、しばかなきゃ懲りないようだな。」
「Σひいいいぃぃぃ!!!」
マスターの言葉に裂君はピューっと逃げる。
どうやら逃げ足は早いようだ。
そんな裂君を見送ってマスターは呆れ気味に言う。
「お前も悪い奴だな・・・お前の“力”だったら私が近づいてきた事ぐらい分かるだろうに。」
「あ・・・まあ、本当は分かってるんですけど・・・」
「・・・?」
「・・・裂君には・・・知られたくないんです・・・」

それを聞いてマスターは納得した。

僕の“力”だったらマスターが近づく前に裂君に逃げるように指示が出来た筈だ。

僕は人の心を読む事が出来るせいか、人の気配には人一倍敏感なのだ。

だから、誰がどの辺りに居るかと言う事など相手が近ければ近いほど、すぐに分かる。


だけど、あえてそれを隠している―――


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