Advance
「うっしゃーーーーー!!!今日は鍋だ、鍋だあああぁぁぁ!?」
「わぁ・・・美味しそう・・・」
あの後、裂君はマスターによってお仕置きはされたが、立ち直りが早いのかもう元気だ。
営業も終わり、今日の晩御飯は鍋だ。
大喜びの裂君の横で僕は地獄のカップラーメン生活の頃と今を比べて少し幸せを噛み締める。
マスターはまだ仕事が残っているので先に食っててくれと言ったので今は僕と裂君だけだ。
裂君は鍋に具をポイポイ入れている。
「なあ、秋人・・・?」
「え?何?」
「秋人はさ、オバちゃんとどう言った関係なんだ?って、言うか明らかに親子じゃないだろ?」
「・・・」
僕は戸惑った。
裂君が僕の生い立ちを知りたがっているのは薄々分かっていた。
まあ、こんな子供が学校にも行かずに働いているのだ。
裂君でなくとも気になるだろう。
「・・・えっと・・・どんな風に見える・・・?」
「歳の差が激しい恋人とか?」
「Σち、違う!!!って、言うか今の発言、マスターの前じゃ絶対に言っちゃ駄目!!!」
あまりのおかしな発言に僕は思わず大声で否定する。
この数日間で裂君の発言に僕はどんなにヒヤヒヤした事やら・・・
「えー・・・そうだったら面白いのになぁって・・・」
「・・・(汗)僕はね、両親に捨てたれたんだ・・・そして、マスターに拾われたの。」
呆れた僕は思わず本当の事を言った。
「捨てられた・・・ふーん、そうなんだ・・・」
裂君は意外そうな表情でそう答える。
だけど、変に気を遣おうともせず、ただ、聞くだけ・・・

だから、安心してしまう

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