Advance
「・・・じゃあ、俺の過去も話さなきゃいけないな。」
「え?」
すると、裂君は自分の過去を話し始めた。
「俺の両親は・・・もう死んじゃったんだ。」
「え・・・?」

驚いた。

裂君と暮らし始めて多々、裂君の心を読んでしまう事があったが、この事を知るのは初めてだ。

「父ちゃんは剛オジさんと同じ刑事だったんだ・・・だけど、ある事件で母ちゃんと一緒に死んじゃった。だから、今は剛オジさんの子供として生きてる。」
「そ、そうなんだ・・・」
「だからさ、お前と同じだな。」
「え・・・?」
裂君の言葉に僕は目を丸くした。
「お互い、両親から離れて別の人の子供になって・・・そんで、その人達が元・夫婦・・・何か俺達、生き別れの兄弟みたいだな。」
そう言って笑う裂君。
そんな裂君の笑顔が眩しくて・・・
僕も思わず笑った。
「そ、そうだね・・・」
「だろ?だって、初めてお前と会った時なんか完全にあの場は修羅場化してたしな(笑)」
「いやぁ・・・あの時は本当にマスターが怖かった・・・」
「ははは!?確かに!?」
思い出したかのように裂君はケラケラ笑う。
僕も鬼のような形相のマスターやオロオロする剛さんを思い出して笑ってしまった。
「まあ、俺とお前はもう兄弟みたいなもんだろ?こうして、一緒に暮らして一緒に飯食ってるんだから。」
「そ、そう思って・・・いいのかな・・・?」

僕は戸惑った。

裂君と僕が“兄弟”・・・

“トモダチ”で居る事さえ、戸惑ってしまうのに“兄弟”と言われると嬉しくて逆に戸惑う。

「イイに決まってんだろ?あ、じゃあさ、今、俺がお前に質問したから、今度はお前が俺に質問していいぜ?」
裂君がそう申し出るので僕は考えた。
「えっと・・・」
僕は裂君の顔をじっと見た。
「何でもいいぜ、俺の恋バナとか聞いてて飽きないと思うぜ。」
「・・・(汗)えーっと・・・」
僕はその言葉をスルーしつつも考える。

聞きたい事・・・

それはある

だけど、聞いて良い物かどうか分からない事・・・

「じゃあ、恋バナ・・・で・・・(汗)」
「うっしゃ!?実は幼稚園の時に・・・・・・・・・」
それから僕は裂君に自分の恋バナを延々と聞かされたのだった。


今日も聞けなかった―――
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