Advance
「・・・全く、私が来た頃には野菜しか残ってないとは・・・もう先に食わすと言う方法は却下だな。」
「・・・すみません、僕がついていながら・・・(汗)」
裂君と盛り上がりながら鍋を食べていたらマスターが来る頃にはメインの肉がなくなってしまったのだった。
僕は申し訳なさそうに食事の終わった鍋や皿を洗う。
そして、裂君は満足そうに食べたせいか、ぐっすり寝ている。
「・・・ほんっとうにいい根性しているな・・・このガキ・・・」
「ま、マスター・・・(汗)」
怒りを抑えきれないマスターを僕はオロオロしながら見る。
「あの・・・マスター・・・」
「ん?何だ?」
「一つ、気になる事があるんです・・・」
「気になる事・・・?」
「裂君の・・・右目の事です。」
僕は初めて会った時から気になっていた事が一つあった。
それは裂君の右目の事だった。
左目は赤みが帯びた綺麗な色をしてるのに
右目は色素がない・・・
誰がどう見てもあの右目は普通ではないと思ってしまう。
今日もその事が聞きたかったのに・・・
聞けなかった―――
「・・・まあ、気になるっちゃあ、気になるが・・・軽くどうでもいい。」
「Σえ!?」
マスターの素っ気ない答えに僕は唖然とする。
「剛は何も言っていなかったしアイツ自身も何も言わない・・・と、言う事は放っておいても大丈夫なんだろうしな。けど、あれは多分、確実に右目は見えていない・・・失明してるな。」
マスターの意見に僕は息を飲む。
確かに僕もあれは見えていないのかと感じていた。
だが、裂君と暮らしてても彼は何不自由なく生活をしている・・・
だから、本当は見えているのではないかと思ったりもする。
本当の所はどうなんだろう・・・?
勇気を出して聞いてしまえば早いのに・・・
結局、その日、自分の臆病さに嫌気がさしたまま僕は裂君に続き、眠ったのだった。