Advance
「・・・秋人・・・」
突然、名前を呼ばれて僕は目線をマスターに向ける。
すると、マスターは僕の顔をじっと見た。
「お前は今、幸せか?」
その問いの意味は僕は分からなかった。
分からなかったからすぐに答えた。
「はい、不満もありません。カップラーメンには参りますが・・・」
「それは私も同じだ。」
「ですよね。でも、どうして急に?」
僕がそう問いかけるとマスターはすぐに視線を逸らした。
「いや、何となく聞いてみただけだ・・・」
マスターは何事もなかったかのように呟く。
だが、その直後、僕の脳裏に何かが通過する・・・


『本当にそれでいいのか・・・?』


「・・・」
僕もそれ以上何も言わなかった。
僕にはマスターの真意までもが読めなかったから―――


その夜、カップラーメンで腹が満たされた僕はただ、時に身を任せるままに眠りについた。




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