Chocolate concerto-三村カルテット物語-
「ふーん、成る程ね。それじゃあホワイトデーに期待されても困るし…証拠はさっさと隠滅しよう。」

碧海はそう言うと、チロルチョコの包みを開くと綺麗な指先でチョコを摘み口の中に放りこんだ。



(あれっ、碧海チョコは大嫌いって言ってたじゃん。)

「ちょっと、碧海…無理しなくてもいいのに。」

松浦が、慌てたように両手を振った。


…ゴクリ。

碧海の細い喉が上下に動きチョコは彼の胃の中に納まった。

 
「さっ、松浦の感謝の気持ちも喰っちまったし…帰るよ。」

彼は物凄く苦いものを飲み込んだような表情をした後、中が空になったのを確認させるようにちょっとおどけて僕達に口を開いて見せると、愛用のバイオリンを手にレッスン室を出ていった。


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