14才の地図
「さつきサン、どーして、医者になったの?」

ふと、そんなことを訊いていた。

「やっぱり、若いとき、人が死んで行くのを見たからかな…? 自分が無力で何の力もないコトがはがゆくて、くやしくて、気がついたら、医者になること、決めていたわ」

「ふーん。立派なんだぁ…」

「それこそ、死ぬ気でがんばったわよぉ。あの頃の自分って、我ながら、ちょっと偉いって、思えるもん」

おどけて言い放つ。

そぉかぁー…。

医者かぁ…。

ま、とーてー、あたしには無理だけどね。

でも、そんなふうに、何かしっかりした目標があるのって、ステキだ。

あたしも、さつきサンみたいに、見つけられるだろうか…?

あたしが、本当に、それこそ、命張っちゃうくらいマジに、やれるコト…。



さつきサンに抜糸してもらって、あたしと朽木は、マンションを後にした。

さつきサンは、「さっきの話、一平には内緒ね」って、ウインクした。

もちろん、あたしも、そのつもり。

女同志の話だもん。

…ってゆーほどのコトでもなかったかな?

ま、いっか。
< 161 / 225 >

この作品をシェア

pagetop