14才の地図
朽木は、遠い昔を回想するように、うーん、って唸って、フォークをエビに突き刺した。

「あー。そうそう。んで、のびてたらぁ、すっげー美人に会ったの」

「えー、美人? 誰? 誰?」

身を乗り出す。

真紀かな? さつきサンかな?

「ばーか。もう、5年も前だぜ。とっくに引退しちまってるよ」

「あ、そっか」

あたしは、朽木のミネストローネを失敬して、ゴクンと飲んだ。

「それで?」

白い眼で、ミネストローネのカップを見つめる朽木を無視して、話しのほうをうながす。

「その美人が、俺のこと拾ってくれたの」

朽木が、あたしのマカロニを奪取した。

「つくづく、女に縁があるヤツ…」

「しかも、美人に、な」

確かに、真紀もさつきサンも、キレイだ。

外見的な美しさは、もちろんだけど、内側からにじみでる魅力みたいなもんがあるよね。

朽木って、イーカゲンぽいけど、女を見る眼だけは確かって、気がする。

「じゃあ、べつに、あたしにあんなこと言う必要、ないじゃん」

朽木の皿から、あさりを殻ごと取った。
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