14才の地図
のろのろと、夏がゆく。

あたしのケガは、もう、ほとんど回復してる。

エリからもらったセピアを乗り回してるから、弥勒寺のアッシーも用済み。

あたしは、友達がいっぱいできて、ちょっとしたカオになっていた。

こんなに楽しくていーのかなって、ときどき思う。

ウンメイなんて、不思議だなって、思う。

あの日、もし、真紀に会わなかったら。

朽木に会わなかったら。

あたしは、まだ、独りぽっちのあの部屋で、泣いていたかもしれない。

無理した、人形のよーな、『いいこ』を演じていたかもしれない。

地獄だなって、思った。

そんなんじゃ、本当にやりたいことだって、みつかりっこないじゃん。

あたしも、後悔なんかしていないし、そんなもの、したくもない。

前を見るんだ、前を!

しっかり面(おもて)を上げて、眼を開いて。

自分の足で歩けなきゃ、生きてる価値がないから。

たとえ、手が動かなくても、喋れなくても、体のどこかが悪くても、自分の意志さえあれば…。

意志さえあれば、いい。

そんなふうに、思えてきた。

なにかが、ほんの少し、見えはじめてきたよーな、気がするんだ。
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