14才の地図
救急処置室のピーンとはりつめた空気のなかで、真紀は、眠っていた。

頭も顔も、ホータイでぐるぐるまきで、ミイラみたいだった。

かすかに、口元が動いて、何か言った。

ま…い…。

そう、動いたような気がした。

あたしは、声がでなかった。

体も、金縛りにあったみたいに動かなかった。

看護婦さんが、優しくあたしの背中を、押す。

とっとっ、と2歩、前に出た。

点滴の針が刺さった傷だらけの腕。

そっと、手を取った。

だけど、その手は、なんだか血が通ってないみたいだった。

「真紀…」

かすれた声で、呼びかけた。

「真紀、しっかりして」

真紀の、こわばった指先が、ぴく、って動いた。

あたしは、はっとして、手に視線を落とす。

と。

ぴ──。

心音が、消えた。
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