14才の地図
あたしは、そっと肩越しに、えーこを見た。

えーこは、英文を読み終え得意気に訳を読む。

えーこが読んでいる訳は、さっきあたしのノートから写し取ったものだ。

「たいへん。よろしい」

篠村は、満足そうにうなずいて、解説を始めた。

席についたえーこは、あたしを見上げて、ちょっと首をすくめる。

あたしは、自分の要領の悪さを呪いながら、視線を教科書に戻しかけた。

と、窓際のきんいろの髪が、目に入った。

真紀ちゃんだ。

かっくん。

頭が、前に落ちる。

真紀ちゃんは、寝ていた。

ぽかぽか陽光の射し込む窓際の席で、真紀ちゃんは、ゆったりと船をこいでいる。

その姿は、授業を聞いていなかったくらいで焦っているあたしなんかと違って、何だか超然としているように、思えた。

そんな些細なことが、すごく印象的だった。

真紀ちゃんは、あたしに無い物をたくさん持ってる。

こんな中途半端なあたしとは、全然別の、何かを。

そんなふうに思えてならなかった。

だから、こんなにも、あたしを魅きつけるんだ。

人が言うには、真紀ちゃんは、ソコウの悪いモンダイジで、不良なんだそうだ。

クラスでも、友達はいなくて、ハミダシ者だけど、ハブにされてること、ぜんぜん気にしてない。

女子同志で手をつないだりもしないし、連れションなんかもしない。

女なのに、硬派ってかんじで、かっこいー。

そう、あたしは、ずっとまえから、真紀ちゃんに憧れてた。

真紀ちゃんは、みんながいう『いいこ』じゃないけど、だからこそ、自分に正直で、自分に自信を持って生きてるんだな、って思う。

そんな真紀ちゃんが、あたしはとっても、羨ましかった。

そんな真紀ちゃんが、何故だかとっても、誇らしかった。
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