残酷ハニー
僕はその表情を見て固まった。
何も言えなくなったんだ。
死のうなんて思っていた癖に、いざ死のうとすると死ねない。
飛び降りようと思っていた癖に、飛び降りれない。
……こんなの
「…矛盾だね。
僕、何で……何で………」
「人間、誰だって矛盾の塊だよ。
死のうなんて思っても、死ねるもんじゃないんだよ」
今まで冷たかった筈の少女が、強く真っ直ぐに言う。
僕はバッと少女を見る。相変わらず、瞳の色は冷たかった。
…しかし、その言葉は「死ぬな」って言っているようで、何故か温かかった。