マイワールド


「二年生、相川さん、
放課後相談室に来て下さい。」

その放送で、私はふと気がついた。

自分は教室にいる。

浮かれ過ぎていたようだ。

今までの記憶がない。


今って放課後?

誰かに確かめたいが、聞く相手がいない。

まぁいい。終業式は終わった。

相談室の前にいれば何とかなるだろう。


私に誰が何の用で呼んだのか、そんなことは正直どうでもいい。

私は誰にも用なんてないから。

中栄未来なら別だが。

「まぁどうでもいいけど。」

さっきよりも声が大きくなった。


とりあえず相談室の前で、誰かが来るのを待った。


「今日どこいく?」

「ゲーセン!」

「え?

あそこ改装中じゃなかった?」

「んだよ?

それ。

じゃぁ隣のカラオケでも行くか!」

「あそこ激安じゃん!

ねぇ、みんなも誘おうよ。

誰入れる?」

「二人でいいじゃん。

三時間歌いまくりで!」


クラスの人だ。

彼女らの元気な声が私の耳を支配していく。

私には無縁の会話だ。


まだ誰ともカラオケなんて行ったことはない。

クラスメイトの悪口を言ったこともないし、
男子を見てキャーキャー叫んだこともない。

そういう経験をしてから嫌われればよかった。


暇になればこんなことばかり考えてしまう。

「まぁどうでもいいけど。」

今度はみんなの声に掻き消された。

どれくらい大きな声で言ったのかはわからない。


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