マイワールド
次のページからは、何も書かれていなかった。


殴り書きの最後のページには、
所々にシミがある。


私は、長編小説を読み終えたように、大きく息を吐いた。


たった四年間だったが、
ネイルにとっても、ウーパーのお父さんにとっても、長い時間だったのだろう。

「彩音ちゃん?」

ウーパーは宝石でも見つけたような顔で私を見た。

「……。」

私は返事に困った。

「読んでくれてありがとう。

何かある?」

「あ……この日記、
……中栄さんのお父様の気持ちがとても伝わってきました。」

「何だ……?

堅苦しいなあ。

それじゃぁ、何にもわからないよ!

それに、『中栄さん』じゃなくて、
『ウーパー』ね。

もっと、オープンに!

僕のこと、友達だと思っていいからさ!」

「あ……はい!」

なぜだろう。

ウーパーには特別な才能があるようだ。

もちろん、映画監督としての才能は言うまでもないが、
人の緊張をやわらげることがとても上手だ。

言っていることのひとつひとつは、何でもないのだが、
どこかに、他の人とは違うものがある。
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