マイワールド


意味のある雑談が終わった頃は、
もう六時過ぎだった。

私の頭の中では、
ウーパーとの会話がしつこくリピートされている。

もしかしたら、『雑談』だと思っていたのは私だけで、
ウーパーにとっては大事な『取材』だったのかもしれない。


帰りは、なぜか竹田さんがやってきて、
彼がウーパーの車を運転することになった。


理解不能な二人の行動は、
私の心を温めた。

「彩音ちゃん、
今日から、毎日電話してもいいかな?」

車の中で、ウーパーが空気をさえぎるように言った。

「えっ?」

今日だけで、私は何度も混乱している。

ウーパーも、いきなりわけのわからないことを言ってくる。

実は二人とも『言葉音痴』なのかもしれない。

「ウーパー、おまえ、何考えてんだよ?」

竹田さんは信号待ちになると、
慌てそう言った。

「変な意味じゃないよ。取材として。」

ウーパーは冷静に返した。

「あ……はい。」

私は少しひかえめな態度で返事をした。

「びっくりしたなぁ。

ウーパー、彩音ちゃんに惚れたのかと思ったよ。」

竹田さんは胸を撫で下ろすようにして、アクセルを踏んだ。

「時間は、夜の八時ぐらいで平気かな?

何気ない会話から、大事なことを探していきたいんだ。」

「はい。」

「あ、大丈夫だよ。

毎回僕がかけるから、料金とかは気にしないで。」

「ありがとうございます。」

その後の車内は、いろいろな話で盛り上がった。


とくに、ウーパーと竹田さんの学生時代の話は印象的だった。

映画研究部員としての彼らの青春話を、
いやと思うほど聞かされた。
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