マイワールド
結局、今日はこんな調子で終わってしまった。
家に帰ると、クリが出迎えてくれた。
「クリぃ!
今はあんたが一番の救いだよ。」
私はクリを抱きしめた。
今日も八時ぴったりに、
ウーパーから電話がきた。
『今日は早く終わったから、三十分は話せるよ。』
「そうですか。」
私はクリを撫でながら答えた。
『今日はどんなことがあった?』
「学校でいろいろと……。
ごめんなさい。
今日も、映画の参考になるような体験はしてないんです……。」
『気にしなくていいよ。
案外、重要な話だったりするかもしれないよ。
大丈夫。彩音ちゃんは、この僕が選んだ人なんだから。
で、どんなことがあったの?』
私は今日起きたことを細かく説明した。
『そっかぁ。
でも、ずいぶん元気そうだね。』
「いじめられてるわけではないですし、
信頼できる彼氏もいますし……。
それに何より……クリがいますから!」
私はクリをぐしゃぐしゃになるぐらいに撫でた。
『クリ?』
「はい。
今隣にいるんです。
猫です。
なんか私、すごい癒されちゃって。」
『まぁ、動物に触れることによって、
元気が出るっていうのはよく聞くけど……。
そんなにすごいんだ。』
「すごいです!
下手に薬飲んだりするよりいいですよ!」
『確かにね……。
心に深い傷を負った人が、犬に救われるって話もあるもんね。』
この話は参考になったらしい。
下手に悩むより、こうして何気ない会話をしながら浮かんできた話は、
すごいものだったりするようだ。
ウーパーの才能に、今更だが、感激してしまった。
『それじゃ、また明日。』
「はい。」
通話時間は、意外に十五分足らずだった。