マイワールド
ピピピ――。
かけたはずもない目覚ましが鳴っている。
私は乱暴に止めて、部屋を出た。
もう朝のようだ。
「あら、泣いたの?」
母がテーブルを拭きながら言った。
「え……?」
私は重いまぶたと戦いながら、聞き返した。
「目から耳に向かって、
何か垂れてるよ。」
「は……?」
私はこめかみの辺りを触ってみた。
パリパリしたものがある。
「涙って固まるんだよね。
白くなっちゃうの。
顔、洗ってきな。」
母は涙の理由など聞いてこなかった。
「うん……。」
鏡を見ると、本当に固まっていた。
目から耳にかけてなめくじが歩いたようで、ゾッとした。
それと同時に、昨夜のことを思い出した。
暇人な私――。
それに、『学校』というもう一つの悩みもある。
「はぁ……。」
この時初めて、
『気が重い』の意味を知った気がする。
「気合い入れて頑張りなさいよ!
二年の成績は入試に影響するんだから。」
母はハイテンションだ。
「んじゃ!
いってらっしゃい!」
無理矢理送り出された。