マイワールド
席替えをして、
今はレミの一つ前の席だ。

「ネーヤア。」

レミが後ろから私の肩を叩き、

「今の、ウチらに向かって言ったのかな。」

振り向いた私に、コソコソと言ってきた。

「かもしれないね。」

私は作り笑いをうまく見せた。


いつもなら、席の前後で話している生徒を見つけると怒鳴り声をあげる先生も、
今日は何も言ってこなかった。

「きれいごと……。

何もわかってない……。」

レミはそうつぶやいて、
顔を腕の間に伏せてしまった。

「どうしたの?」

私はレミにだけ聞こえるように言った。

だが、周りの人達もこの状況を理解できているようだった。

当然、先生も見ている。

けれど、誰も何も言ってこなかった。

「前向いてて……。」

レミは顔を伏せたまま言った。

「うん……。」

私が前を向くと、先生は私に笑顔を見せた。

そして、何事もなかったかのように、授業を再開した。

「どうしたの? 

こいつ。

泣いてんの?」

隣の席の中野(なかの)という男子が、私に聞いてきた。

「そっとしといてあげて……。」

私は、心にもないことを言った。

「5時間目に、来週に迫った職業体験の最終チェックを行いますので、
各体験先に別れて、活動を行ってください! 

えーと……お弁当食べて、休み時間の後だから、二時からかな! 

では。」

先生の言葉と同時に、授業終了のチャイムが鳴った。
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