マイワールド
「恵子とレミ、
やっぱりあれだけ張り合ってるのには理由があったよ。」
休み時間、体育倉庫で、明が言った。
「つか、おまえ、調べたのかよ?
変態じゃん。
うわ、俺おまえの友達やめようかな。」
裕也が肩を縮めながら言った。
「野球部のやつらから聞いたんだよ。
別に、追跡とかしたわけじゃねぇよ。」
「それ、誰のためにやったんだよ?」
「相川に決まってんだろ?
男子の点数稼ぎだよ。」
「引くわ、それ。
悪いけど、俺とこいつ、もう付き合っちゃってるんだなぁ。
簡単におまえには渡さない!」
「そこ言うなよ……。」
二人の芸人のような会話に、私は思わず吹き出した。
「ごめん。
私、そう簡単に裕也と別れたりはしないから。
でも、調べてくれた明には、心の底から感謝してるよ?
で、恵子とレミがどうしたの?」
私がそう言うと、明は咳ばらいをした。
「野球部の毅(つよし)くんの話によるとだな……」
明はにやにやと楽しそうに言った。
「前置きはいいから、早くしろ。」
裕也はきつく言った。
私に見せ付けているようにも見えた。
「わかったよ。
で……。
恵子とレミは、お姉ちゃんどうしが仲悪いんだって!
お互い、高校は違うけど、
中学の時、殴り合いになるほどの喧嘩をしたらしいよ。
クラス対抗とかじゃなくて、ホントに一対一で。
んで、妹に『あいつの妹とはつるむな』とか言ってんだって。
すげぇだろ?」
明は得意げに話した。
「でもそれ、
結局は噂でしょ?
私達、ただ単に噂話してるだけになるよね?」
私は明と目を合わせずに言った。
「え?
じゃぁ、俺に感謝してないわけ?」
明は不安そうな顔をした。
「感謝はしてるけど、
百パーセントは信じないよ。」
「出たよ、相川の名ゼリフ!」
私と明がそうしていると、裕也が立ち上がった。