マイワールド
着いた時間は、九時半。
案外、時間どおりだった。
「行くよ。
ちゃんと礼儀正しくね。」
「何だよ?
態度の変わりすぎだろ?」
「いいから!
昨日みたいに恥ずかしい態度とらないで!
藤井先生に怒られるっていうより、
私が恥ずかしかったの!」
「はいはい。」
私は顔を変えてからドアを開けた。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
私はもちろん、実も礼儀正しく挨拶をした。
私は少し驚いた。昨日の実とは明らかに違う。
きちんとした、やる気のある態度だった。
「おはよう。
戸田くんは休みだね。
電話で聞いたから。
どうぞ、こちらへ。」
金山先生が、私達を昨日と同じ部屋に連れていった。
「じゃぁ、今日の説明。
今日は、診察室の見学をしてもらうね。
じゃぁ、武嶋くんは一番の診察室に、
相川さんは二番の診察室ね。
診察をする先生はずっと同じじゃないから、
あんまり期待しないように、実くん。」
金山先生は実にウインクをした。
だが、実はきょとんとして頭を下げただけだった。
やはりおかしい。
昨日とは別人だ。
昨日の実なら、大げさに落ち込む顔を見せたはずなのに。
金山先生も、実の変わりように驚いたようだ。
恥ずかしそうに咳ばらいをして立ち上がった。
「じゃぁ、ついてきて。」
「はい。」
「はい。」
狭い廊下を挟んで向かい合った、一番と二番の診察室。
「やってもらうことは先生達に指示された道具を渡すって感じ。
だからほとんど『見学』だけど、
しっかりと大事なことを学んでね。
じゃぁ、入ってください。」