マイワールド
「かなり変わってるな、おまえは。」

聞き覚えのある声がした。

ふと顔をあげると、
そこにいたのは同じクラスの裕也(ゆうや)だった。

確か、レミの彼氏だ。

「な、何勝手に人の独り言聞いてんのよ?

て、ていうか、何で朝早くからここにいんのよ?

かっこつけてんの?」

私は焦りすぎて、うまくしゃべれなかった。

「自主練だよ。

サッカーは体力第一!

別におまえの独り言なんて誰にも言わねぇよ。

ネタにならないんだから。」

裕也は、けなすように言った。

「おまえの変わってるとこ言ってやろうか?」

「頭大丈夫?

まぁ聞けることなら聞きたいけど。」

大体想像はついている。

『普通じゃないくらい動物好きなところ』、
そう言うに決まっている。

「自分のこと『私』って言うところ。」

私は耳を疑った。

予想は見事に外れた。

「は?」

思わず怖い声を出してしまった。

「いや、最近思うんだけどさ、
女子のほとんどは自分のこと『ウチ』っていうじゃんか。

少なくて『あたし』だろ?

『私』って何か大人っていうかエリートっていうか。

なんか変。」

裕也は私の隣に座った。

同級生と一緒にベンチに座るなんて、なぜか懐かしい気がする。

「女子のどこ見てんのよ?

悪かったね。」

私は苦笑いをした。

「でも変えないでくれよ。

おまえが『ウチ』とか言ったら俺引くから。」

「は?」

「んじゃ!

あ!

言っとくけど、
俺別におまえのこと嫌いじゃないから。

話し掛けてもいいから。」

そう言って、
走っていってしまった。

「変なのはどっちだよ?

話し掛ける訳ないでしょ?」

小声でつぶやいてみた。


レミの彼氏とは思えないほど、
バカでさっぱりとしたやつだった。

「まぁどうでもいいけど。」

微笑を浮かべて言ってみた。


結局、早朝の出来事は作文の参考にはならなかった。

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